導入事例

認定NPO法人 自然環境復元協会 様

自然環境復元協会(Narec)は、「人と自然の共生」を掲げて自然環境の保全活動に取り組む認定NPO法人だ。事務局長の河口秀樹さんに、同協会の取り組みや震災復興プロジェクトにおけるサイボウズLive活用についてお話を伺った。

サイボウズLiveで叡智結集 「環境のお医者さん」、震災復興に発つ――Narec
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自然環境復元協会(以下、Narec*)は、「人と自然の共生」を掲げて自然環境の保全活動に取り組む認定NPO法人だ。事務局長の河口秀樹さんに、同協会の取り組みや震災復興プロジェクトにおけるサイボウズLive活用についてお話を伺いました。

*Association for Nature Restoration and Conservation

自然環境を復元する「環境のお医者さん」を育てる

Narecの活動内容を教えて下さい。

Narec設立のきっかけは、環境開発により身近な自然が失われつつある中、静岡大学、信州大学など全国の研究者が集まり、ビオトープ(生物空間)の研究を横断的に始めたことです。「人間と自然が共生する場所」を作る団体として、創設から20年近くにわたり、事業を展開しています。

静岡県三島市の源兵衛川

静岡県三島市の源兵衛川。ヘドロが繁殖し汚水となっていたが、子供たちが遊べる川になった。
(提供:NPO法人グラウンドワーク三島)

具体的には、小川や里山といった身近な自然環境を復元・維持する活動を続けています。コンクリートで固められた川を元に戻して水辺で遊ぶ子どもたちを呼び戻したり、埋め立てられた池を復元してトンボの楽園を再生したりしています。

ゴミの汚染で草木や水辺の生物が減少した静岡県三島市の源兵衛川では、地域住民、行政、企業が一体となって環境保全に取り組んだことで、子供たちが遊べる清流に再生することができました。

自然環境を守る事業を営んでいるということですね。その中でも「環境再生医」に注力しているとお聞きしました。

Narecは「身近な自然の保全」「農山漁村の活性化」を手掛けていますが、柱としているのは「環境再生医」です。これらの活動の環境再生医とは、地域の環境を診断・治療する「環境のお医者さん」と考えてください。自然環境に関する専門知識や歴史・風土を理解し、市民の立場で環境再生を推進していく役割を担っています。全国で3000人以上が活躍しており、その比率は50~60代の方、学生が半々です。

多くの方は、「自然のまま何もしない状態」が自然環境の保全に寄与すると考えがちです。しかし農山村の生物多様性を保つには、農林漁業のように「適度な度合いで人の手を加え続けていくこと」が必要です。人の手が加わっていない里山や棚田は、植物の種類が減り、樹木もやせ細っているのが現状です。

こういった身近な自然環境の喪失は、そこで住む人々の”心の故郷”の喪失と等しいのではないでしょうか。こうした事態を改善するために、環境再生医の育成に注力しているのです。

NPOの役割は「お金に換算しにくい価値」を守ること

自然環境保全は主に行政の管轄だと理解していました。NPOとして自然環境保全に取り組む上で、どういった考えや理念に基づいて行動していらっしゃるのでしょうか。
河口さん

事務局長の河口秀樹さん

もちろん行政や企業も環境庁ができてから、環境保護等に積極的に取り組んでいます。環境庁は公害問題をきっかけに設立されました。

NPOは、阪神淡路大震災で非営利活動の力が認められるようになったことが誕生のきっかけです。経済至上主義に陥った社会を元のバランスに戻す役割として、期待を集めました。

社会を構成する要素を、行政・政治・文化・地域としましょう。行政がお金という価値に傾くと、癒着(ゆちゃく)や談合が生じます。政治が傾くと、政治献金などの問題が生じます。文化をお金という価値だけで判断すると文化が衰退しますし、地域をお金というものさしで判断すると、隣近所と会話をして「なんぼのものになるか」ということになります。

経済至上主義とは「環境を守ってももうからない場合は、環境が破壊され続ける」ということです。だからこそNPOは、社会貢献を第一義として、お金の価値だけに偏りすぎてしまった社会のバランスを取り戻す活動が求められているのです。

震災が奪った「被災地の人間性」を再生する

Narecの活動として、「東日本大震災・復興支援プロジェクト」を進めているとお聞きしました。改めて、こちらの活動についてお聞かせください。

NPOは阪神淡路大震災をきっかけに設立された組織という背景もあり、「今回の震災に対して動かなくて、何がNPOだ」という思いがこみ上げてきました。そこで、2011年4月23、24日に、岩手県釜石市や宮城県若林区、茨城県大洗町を視察しました。

茨城県大洗町では、在来植物による浜辺の自然再生を手掛けている

現地で強烈に感じたのは、「津波は何もかもを奪い去った」ということ。人・住居・お金・自然・景観だけでなく、人間の心さえも破壊していったのだと感じたのです。

われわれは「自然環境の復元と人間性の回復」をミッションとして活動しています。今回の震災に対して、自身の強みを生かして貢献するしかないと思い、「エコトーンの再生と沿岸部のふるさと回復」を掲げ、活動を開始しました。6月には宮城県で海岸林およびエコトーン再生のフォーラムを開催したのです。

その後、夏場の仮設住居は暑くなるため、被災地の子供たちとグリーンカーテンを作ったり、根のはりが強い植物を海岸に植えたりしました。自然再生と景観向上、防災対策につながる活動を中心に、できることから始めています。

全国のスペシャリストの叡智、サイボウズLiveで集結

Narecでは、事業活動の情報共有やToDo管理に、サイボウズLiveをお使いいただいています。

当協会は全国3000人の環境分野の専門家と動いております。Narecのメンバーは事務局が4.5人、理事が42人です。事務局の担当者は東京と静岡に、理事は全国各地にいます。通常業務は事務局スタッフで担当していますが、今回の震災プロジェクトでは森・川・里・海や植物・動物・土木など、専門分野が異なったメンバーの叡智を結集する必要があり、専門性を持った理事などの力が不可欠でした。

しかし、メンバーが全国に散らばっているため移動交通費だけでお金がかかり、普段実務をこなしているメンバー同士が時間を合わせることがなかなかできません。理事会を開催しても全国からメンバー全員が集まることはできず、多くても15人程度といったところ。メーリングリスト(ML)で議事録を送ってもすべてに目を通してはもらえないのが現状です。こういった課題を解決するためにサイボウズLiveを導入したのです。

サイボウズLiveをどう運用していらっしゃいますか。

理事の中には、忙しくてすべての情報をMLで把握するのは難しいと感じている人、逆にすべての情報を閲覧したいという人が混在しています。サイボウズLiveを活用する際には、トピックごとに掲示板を分類し、各々の理事に知りたい情報を共有できるように工夫しています。

NAREC1トップ

震災プロジェクト用に作成したサイボウズLiveのグループ

情報共有の方法が変わってきたのですね。

サイボウズLiveを使い始めてから、やりとりする情報の量が一気に増えました。議論を積み重ねて内容を深めていけますし、その内容を文字で残せる点がいいですね。

理事には、植物や土木といった特定分野のスペシャリストとして経験を積んできた方が多く、今ではそのノウハウをサイボウズLiveで共有してくれるようになりました。専門性の高い会話も掲示板に(ログとして)残せる点が良く、会話以上に情報共有が進みます。結果として、1つ1つのコメントの書き込みが長くなっておりますが、みんな絶賛ですね(笑)。

運用で工夫しているポイントはありますか?

私は"枠組み”を作る役割で、掲示板の項目を作り、掲示板の役割を説明するようにしました。具体的には、「情報」「人」「金」「モノ」というトピックで掲示板を作り、情報を共有しています。必要な資源を活動ごとに把握し、PDCAサイクルを回せるようにしたというわけです。

サイボウズLiveでトピックをあらかじめ決めておくと、議論が右往左往することはほぼなくなります。MLの場合、表題と異なる議論に進展してしまうことがよくあり、議論を収束させるのは難しくなります。

やりとりを見ているだけの方も少なくありませんが、書き込みについては「コメントをしたくなったらしてもらえればいい」というスタンスを採っています。ツール利用に対する個々のモチベーションはとても高まっていますよ。皆さん、使いこなしています。

ほかのツールの活用は考えましたか?

情報共有ツールを選ぶ軸は、「会議や議論ができるか」です。これまでは団体活動の情報共有ツールとして無料の掲示板を使っていましたが、ファイルの添付や半角文字のコメント投稿ができませんでした。Facebookを使うことも考えたのですが、情報が(フローで)流れてしまう点を懸念しておりました。専門性の高い理事のコメントなどは、後からさかのぼって確認する必要もあります。

サイボウズLiveは情報が整理されて後からみやすいところがいいですね。ほかのツールとしては、団体のスケジュール管理で使っている「Googleカレンダー」とサイボウズLiveを同期して、予定管理に活用しています。

NAREC掲示板コメント

掲示板でのディスカッション。長文でもみやすく、じっくり議論できる。

サイボウズLiveで不足している機能や改善点などがあれば教えてください。

高年齢層の方でも使ってもらいやすくするために、「ただ見ているだけ」でも情報共有が進む状態にしてもらえればいいなあと。

無料で(このサービスのクオリティ)はありえない。協会の中では大好評であり、非常に満足しています。理事のメンバーにもどんどんトピックを立ててもらえるようにしたいですね。今後は(ユーザー数に応じてグループ単位で)課金するとお聞きしておりますが、有料でも使いたいと思っています。

人と自然の共生、つむぎ上げる

今後はどのような活動をしていきますか?

宮城県気仙沼と茨城県大洗町を中心に、活動を展開していく予定です。気仙沼では複数の団体とともに復興支援センターを立ち上げ、NPOの共同事務所や地域の寄り合い所として活用してもらいます。また園芸療法などによる子どもの心のケアを行いつつ、沿岸部の自然再生に携わりたいです。大洗町では海岸の自然再生と防災対策を実施しながら、町内外の海岸に対する意識調査を行い、街の復興ビジョン策定の支援も手掛けていきます。

また自然環境復元協会の活動では、環境団体と若い人(新しい人)をつなぎ、より持続可能な環境活動を推進することを目指しています。環境保護団体の多くは、高齢化が進行しているからです。東京電力のアンケートによると、ボランティアの目的は「自然環境の保護」が1位なのですが、実際のボランティア活動では「ごみひろい」などが多く、「自然環境の保護」はなんと最下位です。自然環境活動に関連する情報や実際の活動場所がまだまだ不足していると言わざるを得ません。

われわれは全国の活動家と連係し、毎週15~20人で地元の森林など身近な自然を守る環境活動を手掛ける「トーキョーレンジャーズ」の活動を広めるなど、身近な自然に気軽に触れられる機会を積極的につくっていきたいと思います。

ありがとうございました。
(2011/08/25)
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