導入事例

ふんばろう東日本支援プロジェクト様

参加するボランティアメンバーは2500人超で、日本最大規模のボランティアグループだ。これだけ大きな組織が長期間にわたって整合性を失わずに活動を継続できる裏側には、チームをつなぐ独特の情報共有の仕組みがある。

〜2500人のボランティアがたった1つのゴールを目指す〜その舞台裏
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プロジェクトの概要

2011年3月11日に起こった東日本大震災。震災による被害を現地で目の当たりにした早稲田大学の西條剛央氏は、被災地支援を行う「ふんばろう東日本支援プロジェクト」(以下、ふんばろう)を立ち上げた。

ふんばろうではさまざまな支援プロジェクトが同時に進む。「物資支援プロジェクト」では避難所や仮設住宅、個人避難宅に約73万個以上の物資を支援。そのほかにも被災地の状況の変化に合わせて支援の幅を広げ、「冬物家電」「重機免許取得」「ミシンでお仕事」「漁業支援」など50以上のプロジェクトが立ち上がっている。

参加するボランティアメンバーは2500人超で、日本最大規模のボランティアグループだ。これだけ大きな組織が長期間にわたって整合性を失わずに活動を継続できる裏側には、チームをつなぐ独特の情報共有の仕組みがある。

ふんばろうの舞台裏をメンバーの門松宏明さん、 菊池大地さん、鈴木香住さん、岡本直美さん、井上雄人さん、イズミカワソラさん、大矢朋子さんに聞いた。

得意分野と専門性を生かした被災地支援を

皆さまがふんばろうに参加されたきっかけを教えてください。
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ふんばろう取材風景:写真左から門松さん、鈴木さん、イズミカワさん、井上さん、大矢さん

井上:2011年4月下旬に西條さんの記事をmixiニュースで見て、ふんばろうのことを知りました。ところが「ふんばろう東日本支援プロジェクト」のWebサイトにアクセスすると、サイトが落ちている。これはまずいんじゃないかと思いました(笑)。

私はデスクワークをしているので、被災現場ではなく後方で支援ができる機会をさがしていました。本職のエンジニアとして技術で復興に役立てるのではないかと連絡を取ったところ、サイトのインフラを支える「Web班」を私、菊池さん、門松さんの3人でスタートすることになりました。現在はそれに加えて、個人情報などを適切に扱うための内部統制的な作業も行なっています。

菊池:私も井上さんと同じころに参加しました。早稲田大学で開催されたふんばろうの被災地支援イベントに行ったことがきっかけです。 ふんばろうはボランティア経験がなくても参加できる雰囲気で、別団体のイベントに参加した時に感じた「敷居の高さ」がありませんでした。最初は直接現地にかかわる活動をしたかったのですが、1番の目的は復興支援の役に立つことです。得意分野を生かした方がいいと考え、私もWebを中心に後方支援をしようと思いました。

大矢:私は2011年6月に支援物資の送付を手掛ける「物資班」に入りました。ふんばろうのWebサイトで物資支援システムのページを見て、その後Facebookグループを使って活動していることを知り、参加しました。 今は被災動物を保護している方への物資支援を行う「動物班」を立ち上げ、プロジェクトを進めています。

岡本:私は足腰が悪く、後方支援でできるボランティアを探していて、2011年10月末にWebチームに参加しました。ふんばろうのスタンスは、「自分ができる時に、無理をしすぎずにボランティアを継続する」というもの。昼間や夜、週末など各自のできる範囲で支援を続けられるため、「私も参加できる」と感じました。


現場支援、後方支援と自分のスキルを生かせるボランティアに携わっているのですね。ほかの皆さまはいかがでしょうか。

イズミカワ:わたしは普段、動物愛護の活動をしています。ちょうど被災地の動物たちの情報が欲しいなと思っていた時に、西條さんがTwitterで第1回ミーティングの告知をしていて、「何か分かるかもしれない」と思って参加しました。

鈴木:きっかけは、岩上安身さんと西條さんの対談の文字おこしに応募したことです。子どもがいるため被災地に行くことは難しく、在宅で支援に携わりたいなと。「物資班」に参加していましたが、ふんばろうの方針が自立支援中心にシフトして、物資支援が実質的に終了したので、今は在宅でできる「動物班」に参加しています。


参考リンク:「津波被災地の支援について」西條剛央 × 岩上安身:インタビュー対談

門松:私も鈴木さんと同じタイミングでした。直前までやっていた仕事が一段落した時期に、たまたま西條さんがTwitterで文字おこしの作業者を募集していたんです。西條さんとはその前から知り合いでしたし、私は普段編集の仕事をしているので、文字おこしなら力になれるかなと思って気軽に手を挙げました。 でも実際にはそれだけでは終わらなくて(笑)。井上さんの話にあった初期のWeb班もそうですが、いろいろ手を出しているうちに全体をマネジメントするような役割になって、今は情報共有の仕組み作りに注力しています。


西條さんのTwitterやWebでの発信をきっかけに、ふんばろうに参加されている方が多いのですね。

岡本:そうですね。「冬物家電プロジェクト」がその典型例です。1日3000件に上る申し込みを処理できなくなった西條さんが、Twitterでボランティアスタッフを募集しました。

菊池:それでも人員が足りなくて、西條さんが以前対談した糸井重里さんにその情報をリツイートしてもらいました。これにより、たくさんの人がふんばろうに参加してもらえるようになりました。


参考リンク:ほぼ日刊イトイ新聞 - 西條剛央さんの、すんごいアイディア。

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ふんばろう東日本支援プロジェクトでは、多くのチームが自律的に活動している。*組織図は2012年2月時点の状況

ふんばろうという場所を使って、支援を続ける

ふんばろうには、総勢2500人以上が参加していますよね。これだけの大組織が整合性を持って活動できる理由は何でしょうか。

門松:自然に組織が動いているので普段は特に考えていませんが、おそらく理由の1つは単純に、メンバーの誰もが「西條さん」というフィルターを通っているからではないかと思います。 結局、ふんばろうは代表の西條さんが示した理念や方針に共感する人たちが集まっているわけで、それに賛同できない人はそもそも参加していない。目指す方向がある程度一致しているので、誰かが過度な自己主張をしたり、活動の妨げになるようなことをしたりといった問題も起きにくいと思います。 その反面、参加していない人からすると、西條さんが何を言っても無批判に受け入れて遂行する集団のように見えることもあるみたいで、一時期はそういう批判を受けたこともありましたね。

井上:「西條さんというカリスマに心酔した人が集まっている」という風に見えたのかもしれませんが、実際は上司・部下の関係ではないですね。

菊池:もちろん西條さんの一声で物事が進むこともありますが、違うと思ったらみんな遠慮なく口にします。

門松:西條さんも「じゃあ、それで行きましょう」とかすんなり受け入れたり(笑)。結局、メンバーと西條さんの間にしてもメンバー同士にしても、依頼し合う関係で成り立っている。

井上:ふんばろうはすでに知名度もある大きな組織ですから、そこにある仕組みをうまく使って、自分の得意領域を生かして支援をするスタンスの人が多いんじゃないでしょうか。西條さんの発言に違和感を持ったとしても、各々が噛みくだいて自分なりに解釈している面もあると思います。

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2012年5月に開催された早稲田大学でのミーティング。100名を超えるボランティア参加者が一堂に会する会議は圧巻だ

復興支援という共通の目的のもとに集まっているということを、皆さんが意識しているのですね。

岡本:個人の思いはさまざまな方向に向いていても、「現地が復興し、幸せになってほしい」という思いを全員が共有しています。これがブレないことが、組織が自律的に活動できる秘訣かもしれません。

門松:例えばふんばろうでは、メンバー間の情報共有にFacebookを使っていますが、参加者の多くはそれまでFacebookなんて使っていなかった人たちです。 これは"被災地の復興支援"という目的が先にあって、それを達成するための有効なツールとしてFacebookがあったからだと思います。もし"Facebookを使う"という手段が先にあって、それが目的化していたら、なかなか浸透しなかったかもしれません。 それから、Facebookにはふんばろうのメンバー全員が参加しているグループが1つあって、そこを見ると全体がどう動いているのか、大体の雰囲気が分かるようになっています。 実際にはチーム別にそれぞれの場所で詳しいやりとりをしているので、あくまでほんの一部が垣間見える程度ですが、全員がそうやって同じものを見て、大きな流れを共有することで活動が一体化している印象があります。

井上:そのグループに西條さんの"ふんばろうの7箇条(建設的な場にするために心掛けたいこと)"という文章もアップされています。この投稿に定期的にコメントが付き、そのたびに読まれることで、基本的な考え方を確認できるということもあると思います。

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ふんばろうの7箇条

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ふんばろうにかかわる人は、それぞれ独自の立場で支援に携わる。ステッカーやポストカードを作るチームもあり、収益を復興支援に役立てる

チームに応じて千差万別 ふんばろう流サイボウズLive活用術

無料で使える情報共有ツールはいくつかありますが、サイボウズLiveを選んだ理由は何でしょうか。

門松:ふんばろうで最初に使っていた情報共有ツールは、Googleが提供している無料のメーリングリストでした。これは誰でもすぐに設置できるので、震災直後は有効でしたが、その後のメンバー増加に伴ってほとんど機能しなくなってしまったので、サイボウズLiveを使い始めました。 サイボウズLiveを選んだ理由は「無料ですぐに試せること」、そして「使い方が簡単だったこと」です。スマートフォンや普通の携帯電話からも操作できるので、その意味でも「誰でも使える」という利点を感じました。 その後、メンバーがさらに増えたため、1つのグループにより多くの人を登録できるFacebookに拠点を移しましたが、結果的にはそのおかげで用途ごとの使い分けができるようになったと思います。

鈴木:物資班では住所などの個人情報を多く扱うので、限られたメンバーでのクローズドな作業環境が必須でした。サイボウズLiveはその要件にかなっていたので、ふんばろうがFacebookを導入した後も、物資班は主要な活動場所としてサイボウズLiveを使っていました。

井上:内部統制の担当としては、Facebookグループの参加者増は懸念点の1つです。メンバー管理という点では、自由に出入りができるFacebookよりもメンバーごとに参加・脱退が明示されるサイボウズLiveの方が使いやすいですね。ビジネス用途に由来したサイボウズLiveのメリットを感じました。

物資班の中でノウハウが共有できるようになった

限られたメンバーで簡単に情報共有ができる点を評価いただけたのですね。物資班で特に使っていた機能は何でしょうか?

鈴木:主に掲示板です。物資班は大所帯だったので、班の中に複数のチームがあり、そのうちの3チームで1つのサイボウズLiveのグループを使っていました。掲示板には50以上のトピックがあって、コメントの返信がついていないトピックは対応が放置されていることが分かります。 初めのうちは、チーム内のコミュニケーションが必ずしもうまく取れていなくて、作業よりも意思疎通に時間がかかっていた部分もありました。それがサイボウズLiveの掲示板で自己紹介をしてみようということになって、雑談などもするようになってから、普段顔を合わせられないメンバー同士でもオンラインで意思疎通ができるようになりました。 神経を使う作業が膨大にあるので、最初はどうしても切迫感や緊張感が漂っていましたが、お互いがどんな実務を担当しているのかも分かるようになって、途中から雰囲気が変わったと思います。

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物資班のサイボウズLiveには50以上の掲示板が連なる。新しくプロジェクトに参加したメンバーは、掲示板を確認することで過去の経緯を把握できる

鈴木:具体的な作業に関しては、ノウハウの共有に効果が大きかったと思います。最初はWordで作ったマニュアルを1人ずつ配布して、新人の参加者が入るたびにメーリングリストで説明していましたが、サイボウズLiveに新人向けの掲示板を作ってからは、そこを見れば活動内容が分かるようになりました。 ボランティア団体ではメンバーが常に出入りしますから、参加者が増えるたびに同じ話をするのは非効率です。掲示板でマニュアルを共有することによって、同じ話をする必要がなくなりましたし、新人だった人が次に入ってきた人に教えるという流れも自然にできていきました。

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物資班のサイボウズLiveグループトップ。グループの利用上の注意を目に付く場所に記載している。

ToDoリストでWebチームのタスクの抜け漏れがなくなった

物資班では掲示板でふんばろうの活動内容を共有し、溜まったノウハウをスムーズに引き継いでいたのですね。その他のグループでは別の使い方をされているのでしょうか?

菊池:私のいる「Web-up班」では「ToDoリスト」をメインに使っています。この班ではサイト更新に関する複数のタスクが日々発生するのですが、その時に必要なのは「誰が・いつまでに・何をするのか」をきちんと把握することです。
一時期はスピード重視で、Facebookグループのドキュメント機能を使って管理していたのですが、タスクの数が多くどうしても取りこぼしが発生していました。 その後サイボウズLiveを併用して、ToDoリストに担当者と締め切りを明記するようにしてからは、メンバーがお互いのタスクを詳細に確認できるようになって、作業の抜け漏れがなくなりました。

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Web-up班ではきめ細やかなToDo管理により、多岐にわたるふんばろうの活動を、Webサイトでタイムリーに更新できるようになった。

岡本:「Web構築班」は掲示板を使っています。メンバーはみんな本業が終わる時間が遅くて、時間を合わせて話し合うことが難しいため、2週間ごとにFacebookのチャットでオンライン会議を行い、サイボウズLiveの掲示板にチャットログを載せています。会議に参加できなかったメンバーも、掲示板の議事録を見るだけで簡単に進捗をキャッチアップできます。 掲示板に限りませんが、トピックをカテゴリに分けて整理できるのも良いと思います。Facebookグループだとスレッドがどんどん下へ流れてしまって、必要な情報を後から探し出すのが大変なので。

門松:Facebookは短期的で密度の濃いやりとりには適していますが、作業スパンが長くなると一気に不便になるので、情報の整理にはサイボウズLiveの方が適していますね。情報が「流れない」という安心感は大きいと思います。

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チャットでの議論内容をサイボウズLiveに蓄積して、参加できなかったメンバーが共有する

サイボウズLiveを生かし、ふんばろうの知見を別の復興支援に

ありがとうございました。最後にボランティア団体のための情報共有ツールの在り方について教えて下さい。

門松:やはりボランティアというのは、みんなの貴重な時間を分け合って取り組んでいるものですから、その中で積み上げた知見やデータを安全に運用できるのか、言い換えれば「5年後もそのサービスが存在しているか」みたいなことはツール選択の上で重視しています。 サイボウズLiveにしてもFacebookにしても、今使用しているものはそういったことを考慮して使っています。

井上:「サービスの継続性」という点では、ほかのボランティア団体でも長期的に継続しそうなサービスを使っている傾向があると思います。それから、ボランティアに参加する人のITリテラシーには幅があるので、「誰もが簡単に使える」という点も大事で、サイボウズLiveはそれも満たしていると思います。
ただ、状況に応じてツールを使い分けることも大切だと思います。チームの適性に応じて好きなツールを選んでいい、ということは普通の企業ではなかなかできませんが、ボランティアプロジェクトであれば可能だと思います。

門松:「一度このツールに決めたから、それ以外は使わない」というのは"ふんばろう的"ではないですね。私たちはごはんを食べるときにフォークやスプーンや箸を料理によって使い分けるように、道具は目的や状況に応じて変えるのが自然だと思います。
何を食べるときも先割れスプーンしか使わない、というのではかえって不便ですよね(笑)。同じような意味で、ふんばろうにはネットだけでなく、対面のミーティングを活発に行うプロジェクトも少なくありません。 ミーティングやFacebookグループでのやりとりが「口語」や「ローカル言語」的なものだとすれば、サイボウズLiveでのやりとりは「文章」や「国際的な共通語」のようなものだと思います。前者は複雑な生の情報を素早く交換することに向いていますが、後者はそれを汎用性の高い情報に置き換えて、後に残りやすい形で扱うことに向いています。時間や空間の隔たりを超えて、必要な情報にアクセスしやすいのがサイボウズLiveの特徴だと思います。
今後はそのように蓄積したふんばろうのノウハウを、別のさらなる災害に対しても役立てることができたら理想的だと考えています。

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